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エシカルな選択が、ファッションを自由にする|Liv:ra/TSU.NA.GU. 小森優美さん

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草木染めのランジェリーブランド「Liv:ra」オーナーでデザイナー、ミレニアル世代で日本の伝統技術の本藍染めを軸にエシカルを広める「TSU.NA.GU.」の代表理事を務める小森優美さん。それぞれを立ち上げることになったきっかけや、小森さんの 考えるこれからのファッション業界について、お話を伺いました。

不透明さを孕(はら)んだ生産背景に疑問

2010年に独立して、もともとファストファッション業界にいたこともあり、ファストファッションの通販事業をスタートしました。会社に務めていた頃から、何かを搾取しなければ成立しえない価格設定や、異常な生産ペース、大量の廃棄問題など、ファッション業界の生産背景には疑問を持っていましたが、東日本大震災を機に、地球のことや人のことを考えるようになり、それまで以上にファッション業界の不透明な生産背景が気になるようになっていきました。一方で自分自身の消費行動に対しても矛盾を感じるように。自分が納得できていないものを売って得たお金で、私自身は生産背景のきちんとしている良いものを選んで購入している……良心の呵責といいますか、自分自身に入って くるお金も納得できるものでなければいけないと思うようになりました。これがランジェリーブランド「Liv:ra(リブラ)」を立ち上げたきっかけです。

世界の淡水汚染の20パーセントは、ファッション業界の織物加工や染色によるものと言われています。つまり化学染料。私がめざしたのは、私自身が納得のできる「本物」のブランド。私にとっての「本物」の一つは水を守ることであったので、Liv:raの製品は、化学染料を一切使用せず、草木染めで着色しています。草木染めは天然染料であることと、生地の風合いをよくしてくれるところも特長です。イメージはウォッシュ加工の天然版という感じ。京都の職人さんによる新万葉染めという技術を用いていて、色落ちしにくいとされていますが、それでもどうしても天然なので色に変化は訪れます。それにも関わらずリピータートしていただけるのは、その風合いが生み出す「着け心地の良さ」が大きな理由のひとつだと思っています。

本来伝えるべき世代とエシカルを繋げたい

2016年に知人のブランドと共同で、東京の下北沢にショップをオープンしました。もともと東京はエシカルへの関心や意識も高いと感じてはいたものの、イベントを開催すると、学生を中心とする若い世代が集まってくれました。彼らはこういったことに積極的で、しっかりと問題意識を持っています。ところが、エシカルファッションは価格が高く、学生さんが気軽に購入できるものではありません。さらに職業としての選択肢が少なく、就職を機にエシカルとの 関わりから縁遠くなってしまいます。本来伝えるべき世代が、経済的理由でエシカルとの関わりを諦めなければいけないとう現実を変えていきたいと、2018 年に「一般社団法人TSUNAGU」を設立しました。現在、20名弱のメンバーが 得意分野を持ち寄って、藍染めを軸にエシカルを広める活動を行なっています。「TSU.NA.GU.」というブランドを作り、私たちでデザインしたTシャツやワンピースなどを、藍染め職人に染めていただいています。これまでに全5アイテムを販売しました。生産にかかるコストをすべて開示しており、その上で購入者自身が価格を選べるという仕組みを導入しています。

不定期で靴下などの製品を無駄と負担のない受注生産で販売したり、エシカルを広めることを目的としたトークイベントやワークショップをしています。歩みはゆっくりですが、これもメンバー全員に負担がないことを大切にしていているから。調和を大切にしながら、自分たちらしいペースで活動できているのも良いことだと感じています。


本来ファッションは自由を与えてくれるもの

ファッション業界は色々な意味で人に依存している業界です。原料生産者、 原料加工者、パーツ生産者、デザイナー、パタンナー、代理店、販売店……挙げきれないほどに人と時間を要しています。年々ファッション業界の労働者の人権問題は深刻になっていて、その上環境のことも考えるのであれば、ファッションは新しく生み出さない方がよいとさえ思います。一方でファッションは私たちを自由にしてくれる個性の表現でもあります。現状の仕組みをワクワクするものに変えることで、ファッションに関わる人を苦しい状況から解放したいという思いから、一般社団法人TSUNAGUでは、3Dのデザインシステムを使ったプラットフォームを企画し、今年中のローンチをめざしています。このシステムを使うと、まるで本物のようなファーストサンプルを3Dで作ることができるようになり、デザイナーは経済的な負担を感じずに、もっと自由なクリエイティブに挑戦することができます。公開したデザインから人気のあるものを受注生産のステージに乗せ、受注生産の希望を募ります。工場の生産ロットに見合わなければ生産はしません。つまり誰も大きな負担を負うことなく、確実に販売できるものだけを生産することになるのです。 これはテクノロジーの進化によって可能になる仕組みですが、日本のファッションはテクノロジーの分野では世界に5年くらい遅れをとっていると言われています。

心が自由になったことで見えてきた「私の役割」

実は、2019年は私自身にとっても「解放」がキーワードとなった年でした。ここ数年、達成を目標に頑張りすぎてしまって、ゆとりがなくなっていました。仕事において手離すものとそうでないものを改めて考え、1/3 程に圧縮、Liv:raの生産についても、TSU.NA.GU.に合わせるかたちで、受注生産に切り 替えました。これらはとても勇気のいる決断でしたが、今は決断してよかったと心から思っています。時間があるので、ブランドとじっくり向き合うことができますし、お客様もなぜ受注生産なのかを理解いただければ待ってくださると身を持って知ることができました。何より、自分の中に安心感がある状態から生まれるものの大切さを感じています。
社会貢献についても言えることなのですが、億単位の大規模な金額が動いたり、大きく注目されることが貢献度が高く見えがちですが、本質的なことを考えれば、小さくても色々な人が自分らしい持続可能な手法を選択していくことに意味があるように思います。心が自由になったことで、私の役割はここにあると思うことができたので、評価やお金にとらわれずに「私の役割」に力を注いでいきたいと思っています。

小森 優美(こもり ゆみ)
新卒でファストファッションのデザイナーとして就職後、 商社系ブランドライセンス事業会社の新規事業開発室に転職。2010 年株式会社HighLogicを設立。自然や人、地球と調和したファッションのあり方を模索しながら2013 年、草木染めランジェリーブランド”Liv:ra(リブラ)”開始。2018年一般社団法人TSUNAGU を設立。プロダクトデザイン、システムデザイン、講演など、エシカルファッションを軸に多分野で活動する。

【Liv:ra 公式サイト】
https://www.liv-ra.com

【TU.NA.GU. 公式サイト】
https://www.tsunagu-fashion.com

草木染めランジェリーブランド 「Liv:ra 」についての記事もこちらで公開中。

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